清 竜人6thアルバム『WORK』オフィシャルインタビュー 第1回
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WORK
 ミュージカル的なドラマツルギーを展開しながら、アイドルポップやアニメソングのサウンドプロダクションに接近した4thアルバム『MUSIC』以降の清 竜人は、次にどんな音楽作品を創造するのか、まったくもって予想できない音楽家になった。
 事実、昨年末に発表した5thアルバム『KIYOSHI RYUJIN』は、『MUSIC』から一転し、全編弾き語りで作品を構築。性癖も殺意も愛情も引っ括めたリビドーを認めたうえで、真人間として生きようとする自らの実像を、深淵かつ生臭い筆致で浮き彫りにした。このアルバムは作品性を踏まえCD単体では販売せず、ツアーチケットとセットでEMIミュージック・ジャパンのWEBショップのみで取り扱うという特殊なリリース形態をとった。
 前作から10ヶ月。待望の6thアルバム『WORK』がここに完成した。まず、あらためて強く実感せざるを得ないのは、やはり清 竜人の才能は破格のスケールを誇っているということ。本作は、無尽蔵に広がるその音楽宇宙のなかで、革新性と普遍性が新たなビッグバンを起こしたポップスアルバムである。
 バンドとプログラミングとストリングスを独創的に融合させたサウンドは、ドリーミーな序盤から徐々にカオティックな色合いを濃くしていく。めくるめくサウンドスケープの中心で躍動する竜人の歌は、リズム重視で英語と日本語を織り交ぜることで新奇な音韻を形成し、それをスリリングに転がしながら、どこまでも自由なメロディーを獲得している。意味性から解放されたリリックは、リスナーの脳裏で千差万様の像が結ばれることだろう。
 ストリングスアレンジも含め、完全セルフプロデュース作となった本作に、竜人は必然として『WORK』というタイトルを冠した。そして、このアルバムは『PHILOSOPHY』から『KIYOSHI RYUJIN』まで、過去にリリースした全5枚のアルバムをすべて包括する役割も果たしている。つまり、清 竜人という比類なき音楽家の大いなる集大成でもあるのだ。
 ここでは、清 竜人と『WORK』の核心を解き明かすオフィシャルインタビューを全4回にわたってお届けする。

取材・文/三宅正一

——今回も圧倒されました。
このアルバムですか?
——うん。
ああ、よかったです。
——“この人の音楽力ってどれだけ無尽蔵なんだろう?”って思った。間違いなく清 竜人にしか創造できない、とても刺激的で豊かなポップスアルバムだと思います。加えて、あらゆる意味で劇的なインパクトがあった『MUSIC』以前と以降を結び合せる、もっと言えば竜人くんが過去に制作した5枚のアルバムをすべて包括する役割も果たしている作品だと思います。
うん、そうですね。僕自身も今回6枚目のアルバムで、これまでをひとまとめにできた感じがあるなと思っていて。5枚分の要素を詰め込んだ6枚目というか。
——意識的にそういうアルバムを作ろうと思ったんですか?
そういう作品になればいいなとは思ってましたね。最初に考えていたのが、4枚目(『MUSIC』)と5枚目(『KIYOSHI RYUJIN』)がコンセプチュアルな作品だったので、ちょっと原点回帰みたいな要素もありつつ、次はもっと音楽的なところに寄った作品にしたくて。それで今回は弦のアレンジメントも全部自分でやろうと思ったんですね。音的なところにこだわろうと強く思ってました。
——より音にこだわろうと思ったのはなぜですか?
う〜ん、今回はそんな突拍子もないことはしたくなかったというのもあって(苦笑)。
——そこだ(笑)。
はい。自分なりの上質なポップスというか。日常に馴染むけど、ちょっと刺と味があるというバランスの作品を作りたかったんですよね。そのあたりはうまく表現できたかなと思ってるんですけど。
——間違いないですね。
今回はホントに細かいところまで神経を張り巡らせて作り上げたので。ある種、言い訳がきかないなという気もしてますけど。
——でも、それだけやり切ったということだし、充実した制作だったということでしょう?
作業量が多かったので、あんまり楽しくはなかったですけどね(笑)。
——しんどかった?
そうですね。しんどさが上回りましたけど、作品ができたときの満たされる気持ちは年々増してきていると思います。
——やっぱりこのアルバムを語るうえで『MUSIC』からの軌跡をたどることは欠かせないと思っていて。あらためて竜人くんが『MUSIC』というアルバムを作った理由を訊きたいんですけど。
自分ではあのアルバムを出すタイミングは遅かったと思ってるくらいなんですけど。自分のなかの本質のひとつを出せたアルバムなので。
——確かにこれも清 竜人の本質なんだなとは思った。でも、アウトプットの仕方にあまりにドラスティックな変化があったから、誰もが驚いたというか、最初は唖然として。リスナーの反応はどう受け止めたんですか?
まあ、でも、幸せなことにたぶん落ちずについてきてくれるファンも多いと思うので、それはありがたいんですけど。でも、デビューアルバムで『MUSIC』みたいなことをやってもよかったかもしれないって思うんですよね。
——言い換えれば、デビューの時点であの引き出しを開けられたということですよね。
そうですね。昔からある曲も入っていたし。
——当時からアイドルポップやアニメソングに接近するサウンドプロダクションに人知れず触れていたということですか?
ああいうサウンドメイクになったのは、『MUSIC』を作っている時期によく聴いていた音楽の影響がもちろん大きいです。DTM(ディスクトップミュージック)をやりはじめたのが『MUSIC』の制作に入るちょっと前くらいだったので。それまではずっと生音志向だったから、DTMを覚えたら面白くなっちゃって。一時期すごいのめり込んだんですよね。ただ、ああいうメロディラインや楽曲に寸劇が入ってくるようなアプローチは昔からやりたいと思ってました。単純に楽しいことがしたかったし。かわいい女の子をいっぱい呼んで何かやったら楽しいかなって。
——そりゃそうだ。
ですよね。
——ミュージカル的な音楽表現をベースにしたらそれができるしね。
そう、ミュージカルとかも昔から好きだったので。
——ライブでも歌い、踊り、演じ、エンターテイナーとして作品を体現しましたけど、そこで得たものは大きかったですか。
そうですね。制作でいろんなジャンルの音楽家と交われたのもそうですけど、声優さんだったり、女優さんだったり、違う畑にいる表現者の方と仕事できたのは刺激的で勉強になりましたね。作品と向き合う姿勢や仕事に対する姿勢もプロフェッショナルでしたし。
——以前からアクターに対する憧れももっていたんですか?
興味があった時期もありましたね。学生時代は自分でもパフォーマンス的なことをやっていたので。
——それはどういう種類の?
映像を回してみたりとか。10代のころは音楽だけじゃなくいろんなことに興味があったので。そのへんの名残はあると思いますね。
——ちなみに映像というのは?
ちょっとストーリーを書いて、ショートムービーを撮ったりしてました。そのころのほうがいろいろ能動的に動いてたと思います(笑)。
——自分の表現欲求を満たすために。
そうですね。あとは時間もあったので。高校を中退してプータローだった時期もありましたし。17、8歳のころは特にいろいろやってましたね。
——その映像作品は上映もしたんですか?
一度、秋葉原で上映したりしましたね。
——作風は?
いろいろ撮りましたよ。暗いのもあったり、明るいのもあったり。コメディーみたいなものもあれば、すごく人がいっぱい死ぬようなやつもあったし。ちょっと躁鬱気味だったのかもしれない(笑)。
——劇伴も自分で手がけて?
そうですね。
——いまは映像作品を撮りたいって思うことはないんですか?
いまはあんまりないですね。音楽でやりたいことがいっぱいあるので。それを全部消化できたら絵を描いたりとか、いろいろやりたいって思うかもしれないですけど。いまのところは音楽を楽しくやってますね。
——表現の軸が音楽にフォーカスしていった理由はなんだったんですか?
単純に当時から音楽にいちばん比重を置いていたのもありましたけど、いろんな人と出会っていい話をもらったり、デビューまでけっこうトントン拍子に話が進んでいったので。その流れに乗った感じですね。そこから作品を作っていって、ホントは3枚目のアルバム(『PEOPLE』)のときに『MUSIC』みたいなことをやりたいと思っていたんですけど、なかなかいろんな事情が許さない部分もあり。
——3枚目で、もうそろそろ振り切れたことをやりたいというモードになっていたと。
1枚目、2枚目は初めてメジャーのフィールドでお仕事させていただくというのもあって、すごく楽しく新鮮な気持ちでやってたんですけど、3枚目くらいからダレはじめるんですよね。それで、刺激を求める意味でも『MUSIC』みたいなことをやりたいと思ってたんです。結果的に『MUSIC』は4枚目になりましたけど、4枚目と5枚目の流れはすごくよかったなと思ってます。
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清 竜人6thアルバム『WORK』オフィシャルインタビュー 第2回
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WORK
——『MUSIC』の次に『KIYOSHI RYUJIN』という極限なまでにディープな弾き語りアルバムを作った動機はどういうものだったんですか?
4枚目の『MUSIC』と5枚目の『KIYOSHI RYUJIN』はずっとやりたかったことで。ホントに、タイミングの問題だけだったんですよね。どういうタイミングで出せるかという話をずっとスタッフとしていて。5枚目のようにアコースティックでメロウなものに、極度に内省的な歌詞を歌うこともずっとやりたかったんです。「痛いよ」(3rdシングル。2ndアルバム『WORLD』に収録)にもそういう片鱗はあったと思うんですけど。
——そうですね。
「痛いよ」の先にやりたいことを5枚目でできたかなって。メジャーレーベルでお仕事をさせてもらっていると、どうしても歌詞に使えない言葉もあって。
——検閲の問題で。
はい。そういうことをまったく気にしないで歌を作ることを1回やってみたかった。そのほうが気持ちいいだろうなって。
——実際に作ってみてどうでしたか?
やっぱりすごく気持ちよかったですね。素っ裸で歌ってるみたいな感じなので。いま思うと1枚目や2枚目のアルバムってあんまり自分らしくないんですよね。聴き返しても、いまはもう作れないと思うし、あれはあれでよくがんばったとは思うんですけど、『MUSIC』からこの『WORK』までのほうが、自分らしさが出せてるなって思います。
——『KIYOSHI RYUJIN』はツアーチケットとセット販売しましたけど、竜人くんが完全にひとりでステージに立ったあのライブは、どこまでも静謐な緊張感に満ちたものでした。特別な感触があったと思うんですけど。
そうですね。3月11日の震災があったときにアコースティックミニライブ(6thシングル「ボーイ・アンド・ガール・ラヴ・ソング」の購入特典)が中止になってしまったので。やっとひとりでツアーを回ることができてすごく有意義なものになりましたし、人生で初めてライブをしたときのことを思い出しましたね。
——震災を経て、ミニマムなステージセットでも音楽を体現できる自分でいたいという思いも抱いたんじゃないかなと思って。
そういうことも思いましたね。僕は基本的に作品を作ると、どうしても情報量の多いものができがちなので。そうじゃないところでも音楽を演奏できる自分でありたいなって。
——「KIYOSHI RYUJIN TOUR」の追加公演だった浅草公会堂のライブ後に挨拶したときに、以前に比べて竜人くんの人当たりがオープンになった印象をもったんですよ。そんなことを言われて思い当たる節ってあります?
ライブのあとは高揚してるので。普段よりはテンションが高いからそう感じたのかなって思うんですけど(笑)。
——あはははは。でも、いまこうやって話していてもそう感じるんですよ。
ああ、そうですか。最近よく食べるようになったので、そういうのも影響してるかもしれない(笑)。
——え、それは食事の量が多くなったの?(笑)。
はい。1日3食ちゃんと食べてるので。元気が出てるのかもしれないですね。
——外出も増えたり?
うん、昔に比べると増えましたね。
——なんでそうなったんでしょう?
そっちのほうが楽しいかなと思って。それとは別に、いままではただ楽しく音楽をやってましたけど、今回『WORK』というタイトルもそうですけど、音楽をもっとちゃんとお仕事としても考えなきゃいけないという気持ちが強くなっていて。そういう変化の影響があるかもしれないですね。
——いま竜人くんは24歳ですよね。その変化は成熟とも言えるものでしょうね。
ああ、どうなんですかね? 自分ではよくわからないんですけど。そうだったらいいなとは思いますね。
——『WORK』のサウンドには『MUSIC』とはまた違う角度で多様な音楽を吸収していることも感じるんですけど、人の作品やライブに触れる機会も多くなったりしてるんですか?
ライブに行くのは友だちだったり知り合いのバンドのものが多いですけど、昔に比べていろんな音楽を聴いてるかもしれないですね。でも、音楽好きというほどは聴けてないと思います。好きな音楽が増えた感じはありますけど。
——ちなみに最近引っかかったものは?
中島みゆきさんですね。これまであんまり知らなかったんですけど、アルバムを聴いたらすごくよくて。タイトルを思い出せなくて申し訳ないんですけど、比較的最近の作品だったと思います。中古CDで買ったんですよ。名前の字面がいいなと思って。
——清 竜人の字面も相当いいけどね(笑)。洋楽は?
洋楽は、新しいものはそんなに聴いてないですね。昔から聴いてるものが多いです。そういえば、先日マーカス・ミラーのライブに行きましたね。よかったですよ。
——やっぱりジャズとかフュージョンが多いんですか?
うん、そっちが多いですね。
——『WORK』の全体像はどれくらいから思い描いていたんですか?
5枚目のアルバムを作ってる最後のほうに、ちょっと平行して作りはじめたんですよね。5枚目の先のことも考えなきゃいけないと思っていたので。でも、このアルバムには新しく作った曲も多いですけど、意外と古い曲もいくつか入っていて。
——古いってどれくらい?
10代のころとか。5曲目の「UNDER」も古いですし。
——ああ、この曲は初期の趣がありますね。
はい。デビューアルバムに入っていてもおかしくない感じがあると思います。これはほぼ原形ですね。冒頭でも言った、いままでのまとめ的な意味合いも含めて、デビューアルバムに入れたかったけど、当時はちょっと違うなと思って入れなかった曲を消化できたらと思って。8曲目の「Championship」や9曲目の「Disclosure」も、アルバムのカラーに合わせてリアレンジはしましたけど、原曲は古いですね。
——インタビューの最初に“自分なりの上質なポップス”という言葉が出ましたけど、それを作るために必要なものはなんだと思いましたか?
アップテンポとかメジャーコードとか、そういうことが大きいと思うんですけどね(笑)。いや、ホントはそんな単純なことではないんですけど、僕の作るポップスは、ジャパーニズポップスの構成には則ってないものなので。
——そうですね。
だから、そのへんはすごく感覚的なところなんですけど。一応、自分なりに聴きやすい曲を作りたいなとは思いました。
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清 竜人6thアルバム『WORK』オフィシャルインタビュー 第3回
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WORK
——序盤から中盤まではミュージカル音楽やディズニー音楽ともリンクするような、ジャジーかつドリーミーなサウンドがフィーチャーされてますけど、このあたりが竜人くんのイメージする上質なポップスのベーシックなのかなと。
特に意識はしてなかったんですけど、自然とそういう感じのテイストになるんですよね。あんまり今回は壮大な感じにはしたくなくて。そういう意味ではディズニー音楽みたいなものとは逆の方向にもっていきたかったくらいなんですけど、好きだから知らず知らずのうちにそういう感じが出ちゃうんだと思います。10代後半で児童音楽にハマったので、そのあたりの影響がいちばん濃いと思うんですけど。児童音楽って豪勢に弦楽器が入ってたり、すごく丁寧に作られてる曲もあったりして。そういうところに感化されてるんだと思いますね。
——児童音楽にハマったきっかけはなんだったんですか?
小さい女の子が好きだったからだと思います。ロリコンだったからでしょうね。いまでもそうですけど、基本的に男の人の音楽にあまり興味がなくて。影響を受けているのも女の人の音楽ばかりですね。
——たとえば?
学生時代は椎名林檎さんが好きだったり。特に歌モノは女性アーティストの作品しか聴かないですね。男の人の歌を聴いても楽しくなくて。
——楽しくないという感覚なんだ。美しいとも思わないし?
あ、それもあるかもしれないですね。僕は洋楽がそんなに詳しくないので、日本人の音楽を聴くことが多いんですけど、日本の音楽は女性が作っているもののほうが優れてる気がするんですね。
——どういう部分でそう感じるんですか?
音の使い方でもそう思うし、ボーカリストも女性のほうが魅力的な人が多いなって。
——でも、自分は男性シンガーソングライターであるという矛盾にはどう折り合いをつけてるんですか?
う〜ん、それは自分がやってるからというのがすべてだと思うんですけどね。作り手というよりはリスナーとして女性の音楽のほうが魅力的だなと思うことが多かったので。べつに女の子になりたいわけではないですし。
——でも、『MUSIC』でいろんな女性アーティストと絡めたのは得がたい喜びがあったでしょう。
ありましたね。やっぱり女の人が作る芸術のほうが好みだなと思ったし、ワクワクしました。また女性アーティストと一緒に音楽が作れたらいいなと思いますね。
——では、竜人くんが自分自身の音楽を客観的に捉えると、どんな感想を抱くんですか?
あんまりよくないと思いますね(苦笑)。
——どんなところが?
自分で作っていて、いつも納得いかない点があるからかもしれないですけど、もうちょっと自分が好きなミュージシャンになりたいなと思いますね。無理だと思いますけど、がんばります。
——なんで無理だと思うんですか?
曲を作るときの主観と客観のバランスがよくないと思うんですよ。はじめちゃうとガーッと入り込んじゃうので。
——そうやって創造した音楽がめちゃくちゃ面白いんですけどね。特に近年は、次に生まれる作品の方向性がまったく想像できないし。
ありがとうございます。そうだったらいいんですけど。
——あらためて、今回完全セルフプロデュースで制作に臨んだのはどういう思いからだったんですか。
とにかく今回はすべての音をプロデュースしたくて。それが最大のモチベーションでもあったし。予算的にホーンとかは入れられなかったですけど(笑)、ストリングスに限らずホーンであろうが、ハープであろうが、できるならもっといろんな楽器をアレンジしてみたかったですし。そういうことを1回やってみたほうが勉強にもなるだろうし。
——8曲目の「Championship」では三味線も自分で弾いてるしね(笑)。
そう、これは曲の尺が短かったので、伸ばすためにちょっと三味線でも弾いてみようかなと思って(笑)。
——その発想がぶっ飛んでていいなって(笑)。セルフプロデュースは今後も貫きたいですか?
う〜ん、作品によって変わると思うんですけどね。今回、全部自分でやってみて、譜面に起こすのがしんどいくらいで、細部までこだわって作れたのはよかったんですけど。とにかく仕事量が増えるのでアレンジは人に任せてもいいかなって思いましたけど(笑)。
——いやいやいや(笑)、ぜひまたやるべきだと思う。さっきも話題に出ましたけど、プログラミングの方法論は『MUSIC』から培ったスキルも大いに活かすことができたし。
そうですね。今回は『MUSIC』的な要素も残しつつ、それを生のサウンドとうまい塩梅で融合できたらなと思っていたので。
——アルバムを作り上げるうえで核になったのはやっぱり1曲目の「Zipangu」ですか?
うん、「Zipangu」ですね。まずこの曲をスタッフに聴かせて、“こういうアルバムを作りたいんです”って伝えたんです。とりあえずアルバムのリード曲になるようなものを作ろうと思って。新しいことはしたいけど、あんまり飛び道具的な曲にしないほうがいいなと思ってこういう感じになったんですけど。
——まさに清 竜人の上質なポップスを具現化した1曲ですよね。
ありがとうございます。個人的にもこの曲はすごく気に入ってます。
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清 竜人6thアルバム『WORK』オフィシャルインタビュー 最終回
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WORK
--日本語と英語を並列に織り交ぜながら、独特の音韻を生んで転がっていくリリックの筆致については? これは、日本語詞を書きはじめてから、どちらかというと言葉が優先になっていたというか。美しいメロディをちょっと壊しても、詞を優先させてきたりしたので。今回はメロディラインをそのまま活かしたいなと思ったんです。なので、歌詞はテキトーに書きましたね。
--意図的に言葉の意味性を解体してますよね。
ほとんどがそうですね。ある程度のストーリー性はもたせたかったんですけど、そこに引っ張られずに何回か口ずさんで、それをそのまま起こすくらいの感じで。そうすると、グルーヴに乗りやすい言葉が選ばれるんですよね。でも、何言ってるかわからないですよね?
--でも、この方法論はフレーズの欠片をリスナーの脳裏で組み立てる役割を果たしていて。それが歌の果てしない奥行きになってるから。『KIYOSHI RYUJIN』の歌詞のあり方とは真逆とも言えるし、だからこそ興味深い。
そういう聴き方をしてもらえてうれしいです。テキトーではあるんですけど、せっかく言葉を選んで歌詞にするなら耳に飛び込んだときにハッとするような面白い単語を拾い上げたいという意識はどこかで働いていたと思うので。
--全体的にはラブソングの体を成してるものが多いですよね。
そうですね。たぶん、自分のいちばん得意分野なんですよね。締め切りが迫ってくるとラブソングになりがちなんです(笑)。好きなんでしょうね。愛やら恋やらそういうネチネチしたストーリーが。自然と好きな女の子を追いかけたりとか、そういう歌詞になりますね。でも、ストーリー性やメッセージ性はほとんど皆無だと思ってもらっていいです。
--リリックのあり方は今後もいろんなアプローチを探っていきたいと思ってますか?
うん、そうですね。いろいろやったほうが、リスナーにもレーベルのディレクターにも飽きずに付き合ってもらえると思うし(笑)。いろいろやっていきたいですね。
--作品の流れとしては、7曲目の「Microphone is...」からカオティックな様相になっていくじゃないですか。このコントラストは意識的だったんですか?
そんなに意識はしてないですね。ただ、今回は曲順もパッと決まって。どの曲もそこまで気持ちを入れ替えて作ったわけではないんですけど、おっしゃっているように後半にあるカオティックな曲は、ロック色の強いものをやりたいと思って。それで、ギターを過剰に歪ませたり、ハットとスネアだけでビートを刻んでいくようなアプローチをしてみたんですけど。ちょっとまだわからないですけど、こういうアプローチは今後の展望に繋がっていくかもしれないですね。
--「Microphone is...」しかり、後半はインダストリアルな要素がカオティックなムードを際立たせていて。こういう引き出しもあったんだと思って驚いたんですけど。
どっかで聴いていたんでしょうね……具体的なアーティスト名や作品名は挙げられないんですけど。どこからか得たものが出てるんだとは思います。最近はすごくDTMが発展しているから、シーケンスソフトやソフトシンセとかを使うことで、どこかで吸収したものもアウトプットしやすくなってると思うんですよね。スタジオで聴いていても、生音と打ち込みの区別がつかないときもありますから。それもなんだかなあとは思いますけど、ポップスを作るなら今回のように生楽器にこだわらなくてもできるかなって思うところもあって。もちろん、音だけで勝負する人はそこを徹底的にこだわる必要があると思いますけど。今回、そのあたりの気づきもあったので、その都度、作品に合った制作スタイルを模索していこうかなと思ってます。
--ツアーも決まってますが、どんなスタイルでこのアルバムを体現しようと思ってますか?
生バンドを軸に、あまりライブアレンジ的なことはせずになるべく忠実に音源を再現したいなと思ってます。いまのところ考えてるのはそれくらいですね。
--これを忠実に再現することの難しさもあるしね。
うん、そうですね。僕はTwitterもブログもやってないので、ライブが唯一、リスナーのみなさんとコミュニケーションをとれる場所なので。そういう意味でも大切にしたいと思っていて。そのわりにはライブの回数が少ないんですけど(笑)、年に2回はツアーができたらいいなと思ってます。
--『WORK』というタイトルについては?
今回はアレンジもすべて自分でやって、仕事量的にもかなり多かったので、『WORK』しかないかなと思いまして。あとは一応、プロのミュージシャンとしてしっかりした作品を作りたかったので、そういう意味でも『WORK』がふさわしいかと思って付けました。
--『PHILOSOPHY』にはじまり、セルフタイトルの前作を経て、またシンプルなワンワードのタイトルが付いて。このアルバムはひとつの集大成であり、清 竜人の音楽世界がここからまた新たに広がっていくなという期待感も覚える作品になったと思います。
ありがとうございます。これからも同じことは繰り返しやらないと思いますね。ライブでも年々、新しい曲を歌えるように、自分なりに安定した制作ができたらいいなと思います。音楽をやっていて、"次は何をやろう?"って考えるときがいちばん楽しかったりするので。新しいことを考えることが僕のモチベーションなんだと思います。
--ちなみにヒゲは何か思うことがあって?
いや、なんとなく生やしてみようかと思いまして。剃ったほうがいいですかね?(笑)。
--いや、ワイルドな竜人くんも何をしでかすかわからない雰囲気があっていいと思いますよ(笑)。
なら、よかったです(笑)。
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